レッジョ・エミリア教育とは?歴史・100の言葉・おうちレッジョの取り入れ方

「レッジョ・エミリア教育って、名前は聞くけれど、実際どういうもの?」「アトリエとか、ドキュメンテーションとか、難しそう」「日本ではレッジョの園が見つからない。家でできることはある?」

レッジョ・エミリア教育(レッジョ・エミリア・アプローチ)は、世界的に高く評価されている一方、日本では実践している園がまだ少なく、「気になるけれど、どうすればいいか分からない」となりがちです。

でも、実はレッジョは家庭でこそ取り入れやすい教育法です。決まった教具もカリキュラムもなく、必要なのは「子どもの興味に、大人がどう関わるか」だからです。

この記事では、レッジョの歴史・思想(100の言葉)・特徴・専門職を解説したうえで、家庭でできる「おうちレッジョ」の始め方を、知育ツイオフ(X上のイベント)で実践している方の声とあわせて紹介します。参考文献も最後にまとめました。

なお、モンテッソーリなど他の教育法との違いは、比較記事にまとめています。あわせて読みたい:オルタナティブ教育とは?モンテ・シュタイナー・レッジョ・イエナプランの違い

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※歴史・思想の記述は、末尾の参考文献(学術書・一次資料・レッジョ・チルドレンの公開情報)にもとづいて再構成しています。園の方針は園ごとに異なります。

先に結論

  • レッジョは、戦後イタリアで親・市民の手から生まれた幼児教育です。
  • 子どもを「有能で、自ら探究する存在」として尊重します(「100の言葉」)。
  • 核心はプロジェクト活動ドキュメンテーション(思考の過程を見えるようにする記録)。
  • アトリエや専門職(アトリエリスタ)など、表現と探究を支える環境が整えられています。
  • 決まった教具はありません。だから「おうちレッジョ」として家庭でも実践できます。
目次

レッジョ・エミリア教育とは?

レッジョ・エミリア教育とは、イタリア北部の都市レッジョ・エミリアで生まれ、発展した幼児教育の考え方です。子どもを「自ら考え、探究し、表現する力を持つ、有能な存在」としてとらえ、大人はその探究に寄り添い、一緒に考えを深めていきます。

大人の立ち位置は「教える人」ではなく「共同探究者」——一緒に探究する仲間です。あらかじめ用意された答えを覚えさせるのではなく、子ども自身の問いから学びを広げていくのが、この教育の根っこにあります。

レッジョの歴史

戦後、親と市民の手から生まれた

レッジョの歴史は、第二次世界大戦の直後にさかのぼります。戦争で荒廃した街で、「二度と戦争の過ちを繰り返さない、自分の頭で考える人を育てたい」という願いから、地域の親や市民たちが、自分たちの手で子どものための学校をつくり始めました。労働者や農民、女性たちが力を合わせて建てた、という成り立ちが、この教育の民主的な性格をよく表しています。

その後、1960年代に市立の幼児教育施設が整えられ、レッジョ・エミリア市は、公的な仕組みとして乳幼児教育に力を注いでいきます。「教育は、すべての子どもの権利であり、コミュニティ全体の責任である」という考え方が、街全体で共有されてきました。

マラグッツィと「100の言葉」

この教育の思想的な中心となったのが、教育者で心理学者のローリス・マラグッツィ(Loris Malaguzzi, 1920〜1994)です。彼は体系的な「メソッドの本」を残しませんでした。レッジョが「決まった型」ではなく「考え方(アプローチ)」と呼ばれるのは、このためです。

マラグッツィの理念を象徴するのが、「子どもたちの100の言葉」と題された詩です。ここでいう「言葉」とは、話し言葉だけを指しません。絵を描く、粘土でつくる、体で表す、音を出す、光と影で遊ぶ、物語る——子どもが自分の思いを表現する方法は、100通りもある、という意味が込められています。

そして、大人や学校、社会は、しばしばその豊かな表現の可能性を奪い、「言葉で正しく説明しなさい」と一つの方法に絞ってしまう——マラグッツィは、そうした現状への問いかけとして、この詩を残しました。レッジョは、子どもの「100の言葉」を奪わないことを大切にします(詩の全文は、後掲の参考文献で読めます)。

現在、レッジョの実践や研究は、市が関わる組織「レッジョ・チルドレン(Reggio Children)」を通して、世界中に発信されています。日本を含む世界各地の教育関係者が、レッジョ・エミリア市を訪れて学んでいます。

キーワード①:プロジェクト活動

レッジョの中心となるのが、プロジェクト活動です。子どもの興味から生まれたテーマを、数週間、ときには数か月かけて、じっくり掘り下げていく活動です。

あらかじめ「今月は虫について学びます」と大人が決めるのではありません。子どもが「なんでだろう?」と思ったことから始まります。たとえば園庭で影に興味を持ったら、そこから「影はどうしてできる?」「大きくなるのはなぜ?」と問いが広がり、実験したり、絵に描いたり、体で表したり、話し合ったりしながら、探究が深まっていきます。

大事なのは、結論を急がないこと、そして大人が正解を教えないことです。「光がさえぎられてできるんだよ」と最初に答えを言えば、探究は終わってしまいます。「どうしてだと思う?」と問い返し、子どもが自分で仮説を立て、確かめる時間を守ります。短期的な「できた・終わった」ではなく、長く向き合うのがレッジョです。

キーワード②:ドキュメンテーション

レッジョのもう一つの特徴が、ドキュメンテーションです。日本語では「記録」ですが、単なる思い出アルバムとは違います。

ドキュメンテーションとは、子どもが何を考え、どう試行錯誤したか——その「過程」を、写真や言葉、作品で残して、見えるようにすることです。完成した作品だけでなく、途中の失敗、つぶやいた言葉、試した方法、悩んだ顔まで記録し、壁に貼り出します。

これには、いくつもの意味があります。

  • 子ども自身が、自分の考えを振り返れる:「あのとき、こう思ったんだ」と、思考をたどれます。
  • 大人が、子どもの内面に気づける:記録を見返すと、その子が何に夢中で、何を考えていたかが見えます。
  • 子どもが「大切にされている」と感じる:自分の考えが残され、飾られている。それは自己肯定感につながります。
  • 探究が次につながる:記録を見て「次はこうしてみよう」と、活動が発展します。

「上手にできた作品を飾る」のではなく、「考えた過程を残す」。この視点の違いが、レッジョの面白いところです。

キーワード③:環境は「第三の教師」と専門職

レッジョでは、環境そのものが子どもを教えると考え、しばしば「環境は第三の教師」と表現されます(一人目と二人目の教師は、大人ともう一人の子ども、とされます)。

園にはアトリエと呼ばれる創作空間があり、絵の具・粘土・木片・針金・布・自然物・光を通す素材などが、美しく整えられて並んでいます。光をふんだんに取り入れた明るい空間、鏡や透明な素材。子どもが「触ってみたい」「やってみたい」と思う仕掛けが、空間の中に散りばめられています。

レッジョならではの特徴として、専門職の存在があります。アトリエリスタ(芸術の専門家)が、子どもの表現活動を支え、ペダゴジスタ(教育学の専門家)が、複数の園を横断して実践や記録づくりを支えます。表現と探究を、専門性をもって支える体制があるのです。これは、家庭ではそのまま真似できませんが、「大人が子どもの表現を支える」という発想は、家庭にも生かせます。

おうちレッジョの始め方

ここからが本題です。日本ではレッジョを実践する園がまだ少なく、通える範囲に見つからないことがほとんどです。でも、レッジョは特別な教具もカリキュラムも必要としないので、家庭でこそ取り入れやすい教育法です。実際、知育ツイオフでも、家庭で実践している方の声がありました。

レッジョ・エミリアが大好きです。できる範囲で、興味の範囲をプロジェクト型にしたり、集中している取り組みの写真を飾ってドキュメンテーションしたり、自然素材を集めたりしています。

知育ツイオフでいただいた声

この「できる範囲で」というのが、おうちレッジョのポイントです。完璧を目指す必要はありません。

① 子どもの「なんで?」を拾う

「どうして雨は降るの?」「アリはどこに行くの?」「氷はどうして溶けるの?」——子どもの何気ない問いを、聞き流さずに拾ってみてください。そして、すぐに答えを教えないこと。「どうしてだと思う?」と聞き返し、「調べてみようか」「やってみようか」と誘います。子どもの仮説が的外れでも、考えること自体に意味があります。

② 興味をプロジェクトにする

子どもが何かに夢中になったら、そこを深掘りします。ダンゴムシに夢中なら——探しに行く、観察する、絵に描く、図鑑で調べる、粘土でつくる、飼ってみる、住んでいる場所を地図にする。一つの興味から、いくらでも広げられます。ポイントは、一つのテーマに、じっくり長く付き合うことです。

図鑑は、おうちレッジョと相性が良いアイテムです。あわせて読みたい:図鑑は何歳から?最初の1冊の選び方

③ 家庭でドキュメンテーションをする

  • 集中している姿を写真に撮る:作品ではなく、取り組んでいる「途中」の様子を撮ります。
  • 子どものつぶやきをメモする:「これ、動いてるみたい」といった言葉を、写真に添えます。
  • 壁に飾る:リビングの壁の一角を子どものスペースにして、写真や作品を貼る。
  • 一緒に見返す:「このとき、こう言ってたね」と振り返ると、子どもは自分の思考をたどれます。

大事なのは、「上手」を飾るのではなく、「考えた過程」を残すことです。上手な絵だけを額に入れると、子どもは「上手じゃないとダメなんだ」と学んでしまいます。試行錯誤そのものを大切にしていると伝えたいのです。

④ 素材を用意する

「100の言葉」で表現できるよう、いろいろな素材を手の届く場所に置いておきましょう。特別なものは要りません。紙・クレヨン・絵の具、粘土・はさみ・のり、空き箱・芯・毛糸・布の切れ端、自然物(松ぼっくり・石・落ち葉)、透明な容器・鏡・ライト(光と影の遊びに)。散らかるのが心配なら、場所を決めて、そこだけは自由に使ってよいことにするとよいです。

⑤ 大人は「一緒に探究する仲間」になる

おうちレッジョでいちばん大事なのは、道具でも環境でもなく、大人の姿勢です。教えようとしない。正解を先に言わない。「上手だね」と評価するより、「どうやって作ったの?」「なんでこうしようと思ったの?」と、その子の考えに興味を持つ。そして、大人自身も「へえ、そうなんだ」と一緒に面白がる。大人が探究を楽しんでいる姿こそ、子どもにとって最大の刺激になります。

実例:ひとつの興味を、どう広げる?

「プロジェクト活動」と言われても、具体的にどうするか迷うと思います。身近な例で流れを追ってみます。子どもが散歩中にを踏んで遊びだしたとします。ここが出発点です。

  • 問いを拾う:「影って、どうやってできるんだろうね?」と一緒に不思議がる。答えは言いません。
  • やってみる:家でライトを当て、手や物の影を作る。動かすと影も動くことに気づく。
  • 試行錯誤する:「大きくするには?」——近づけたり離したり。自分で発見します。
  • 表現する:影を紙になぞって絵にする。影絵をつくって物語にする。
  • 記録する:夢中な様子を写真に撮り、「影が逃げる」といったつぶやきを添えて飾る。
  • 広げる:外で朝と夕方の影の長さを比べる。図鑑や絵本で調べる。

ここで大人がやっているのは、教えることではなく、問いを一緒に持ち続け、試せる材料を差し出すことだけです。それでも子どもの中では、光と影の関係、距離と大きさ、時間の変化——たくさんの学びが起きています。

テーマは何でも構いません。ダンゴムシ、水たまり、雲、シャボン玉、電車、お店やさん。そして、途中でやめてもいいということも覚えておいてください。飽きたら終わり。大人が「せっかく始めたのに」と続けさせると、探究は義務になってしまいます。

年齢別・おうちレッジョの関わり方

年齢関わり方の目安
0〜2歳プロジェクトはまだ難しい時期。素材に触れる、感触を楽しむ、自然物を集める。夢中な姿を写真に残す。
2〜3歳「なんで?」が出始める。問いを拾って一緒に不思議がる。描く・つくるを日常に。
3〜5歳プロジェクトが成立しやすい。一つのテーマに数日〜数週間付き合える。記録を一緒に見返すと喜ぶ。
5歳〜仮説を立て、自分で調べられるように。図鑑や実験も取り入れ、探究が本格化。

モンテッソーリとの違い

観点モンテッソーリ/レッジョ
大切にすることモンテ=自分でできる力(自立)/レッジョ=表現と探究
教具モンテ=専用の教具がある/レッジョ=決まった教具はない
活動モンテ=一人で集中して取り組む/レッジョ=仲間との対話や共同制作も重視
大人の役割モンテ=観察者・環境の準備者/レッジョ=共同探究者・伴走者
正解モンテ=教具に正解がある(自分で気づける)/レッジョ=正解のない問いを探究

どちらが優れているわけではなく、方向性が違います。「一人で黙々と手を動かすのが好き」ならモンテ、「作って、話して、表現するのが好き」ならレッジョが合いやすいです。両方を家庭に取り入れることもできます。くわしくは比較記事モンテッソーリの記事をどうぞ。

レッジョが向いている子・合わないかもしれない子

向いていそう合わないかもしれない
絵や工作、表現することが好きすぐに結果や正解がほしい
一つのことをじっくり掘り下げる次々と新しいことに移りたい
「なんで?」が多い手順が決まっているほうが安心する
友だちと話しながら進めるのが好き一人で黙々と取り組みたい

ただ、家庭で取り入れる分には、「向いていない」ことをあまり気にしなくても大丈夫です。子どもの興味に付き合い、考えを大切にする姿勢自体は、どんな子にもプラスに働きます。

レッジョでよくある質問

日本にレッジョの園はある?

レッジョの考え方を取り入れている園はありますが、まだ数は多くありません。「レッジョ・エミリア・アプローチを参考にしている」という形が中心です。通える範囲にないことが多いので、家庭で取り入れる(おうちレッジョ)という選択が現実的です。

親にセンスや美術の知識が必要?

必要ありません。むしろ、大人が「こう描くときれいだよ」と教えてしまうほうがマイナスです。必要なのはセンスではなく、「その子の考えに興味を持つ姿勢」だけです。上手に作らせようとせず、発想を面白がってください。

ドキュメンテーションは毎回やらないとダメ?

毎回でなくて大丈夫です。「できる範囲で」で十分です。夢中な姿をたまに写真に撮り、印象的なつぶやきをメモしておく。それだけでも、子どもの変化が見えてきます。義務にすると続かないので、無理のない範囲で。

散らかるのが耐えられない…

正直、レッジョ的な活動は散らかります。おすすめは、場所を限定することです。「このテーブルの上、このシートの上なら自由」と決めれば、親のストレスはかなり減ります。新聞紙やレジャーシートを敷くだけでも違います。

レッジョをやると、学力は伸びる?

ドリル型の学力を直接伸ばす教育ではありません。育つのは、自分で問いを立てる力、粘り強く探究する力、表現する力です。長期的な探究に慣れているぶん、短期的な暗記や試験対策には時間がかかることもあります。何を大切にしたいか、という価値観の問題です。

まとめ:レッジョは「子どもの考えに興味を持つ」ことから

レッジョ・エミリア教育は、戦後イタリアで親と市民の手から生まれ、マラグッツィの思想のもとで発展した幼児教育です。子どもを「有能で、自ら探究する存在」として尊重し、「100の言葉」=多様な表現を大切にします。プロジェクト活動で興味を掘り下げ、ドキュメンテーションで思考の過程を見えるようにする。大人は教える人ではなく、一緒に探究する仲間になります。

決まった教具もカリキュラムもないので、家庭でも取り入れやすいのが大きな魅力です。日本ではレッジョ園がまだ少ないですが、「おうちレッジョ」として実践している家庭はたくさんあります。

始め方はシンプルです。子どもの「なんで?」を拾う。すぐに答えを教えない。夢中になっていることに、じっくり付き合う。取り組む姿を写真に撮って飾る。そして、大人も一緒に面白がる。特別なものは、何も要りません。必要なのは、目の前の子どもが何を考えているのか、本気で興味を持つこと。それが、レッジョのいちばんの核心です。

参考文献

  • C.エドワーズ、L.ガンディーニ、G.フォアマン 編/佐藤学・森眞理・塚田美紀 訳『子どもたちの100の言葉――レッジョ・エミリアの幼児教育』世織書房、2001年
  • グニラ・ダールベリ、ピーター・モス 著/浅井幸子・佐川早季子 監訳『レッジョ・エミリアのアートと創造性』北大路書房
  • ローリス・マラグッツィ「子どもたちの100の言葉(No way. The hundred is there.)」(詩/レッジョ・エミリアの理念を象徴する一次資料)
  • レッジョ・チルドレン(Reggio Children)公式情報(レッジョ・エミリア・アプローチの一次情報)

※本記事は、上記の学術書・一次資料・公式情報をもとに再構成しています。より学術的に深く知りたい方は、CiNii Research や J-STAGE で「レッジョ・エミリア 保育」「マラグッツィ」などを検索すると、関連する研究論文を見つけられます。

あわせて読みたい:オルタナティブ教育の違いを比較モンテッソーリ教育とは?シュタイナー教育とは?イエナプラン教育とは?

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